- 題名
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男は目の前で大きく煙草の煙を吐き出した。
眉間にしわを寄せ面白くないと顔全体で表している。
訳が分からない。俺は何かしたのだろうか。
訳も分からず、ただ見つめていると、くそっ、と千晶が悪態をついて頭をガシガシと掻いた。
なぁ、と問いかけるはずだった言葉は、俺の口から出る前に千晶の口に吸い込まれていった。
荒々しく抱き寄せられたのに、触れた唇は優しくて、そっと重ねるだけのキス。
俺の髪を大きな手が優しく梳いていって、腰を強く抱き寄せられる。
そして、何度も何度も、ただ触れるだけのキス。
誤魔化しているのだと分かっているけれど、何も言えなくなってしまう。
でも、騙されてなんてやらないからな。
「で?急に不機嫌になった理由は?」
長いキスの余韻をぶち壊す色気のない問い。
「........」
堅くなに口を割らない千晶に、痺れを切らした俺はむっすりと黙っている顔の両頬を抓まんでやる。
「ち〜あ〜き〜?」
みよぉ〜んと頬を引っ張れば、以外にもよく伸びた。
にらみ合って引っ張り続けてやれば、やっと千晶が白旗を振った。
「......降参だ」
さっさとそう言えばいいのだ。
頬を抓んでいた手を離してやり、理由を聞く。
少し赤くなっている。強く抓りすぎたかな.....
「で?」
頬を擦っている千晶は、困ったような恥ずかしいような呆れたような、なんだかよく分からない顔をしていた。
「......お前が、俺じゃない他の奴に触られて、抱きかかえられて、風呂に入れられたって思ったら......」
「思ったら?」
「......っムカついたんだよ!」
ああ、クソッと言う千晶の頬は赤い。それは俺が抓ったせいだけではない、と思う。
「なぁ、千晶。それは、なんで?」
じわりと滲んでくる感情。これは、何?
「なんでって.....」
なぁ、教えてくれよ。
これは、何?
こんな気持ち、俺は、知らないんだ。
「.....嫉妬、だよ。お前は俺のものなのに。だから、ムカついたんだ。......餓鬼くせぇな」
チェッと拗ねたような顔の千晶に、俺は自分の頬が緩むのを感じた。
なぁ、千晶のその感情が嫉妬だって言うなら、俺のこの気持ちは何なんだ?
教えてよ、先生。
END
あとがき
稲葉君がアパートの住人に、お姫様抱っこでお風呂に入れられたのを知って嫉妬した千晶先生です
よくありそうなネタだなぁ...
でもやってみたかったのでしました ^^