- 題名
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「それで、こっちが遠足の時のやつ」
そう言って、田代はまるでマジシャンのように、どこからか数枚の写真を取り出す。
この前の遠足の様子の写真らしい。
「流石だな」
そう感心し、写真を受け取るのは、条東商業高校の3−C担任である千晶直巳。愛しそうに写真を見るその顔から、写っている人物に対して愛情の深さが窺える。
「んで、これが今週オススメ!」
ジャーン!と言う掛け声ととも、に田代がもう一枚写真を取り出した。
「これは!」
千晶は驚きに目を見張った。
「超セクシーに撮れてるでしょ!もうなんていうか、あたしナイス!!」
自信満々の様子の田代。うんうんと頷きながら自画自賛している。
「グッジョブだ、田代」
いい笑顔でグッと親指を立てる千晶は、なんとも幸せそうだ。
グッと親指を立て返して、田代と千晶は頷き合う。
千晶の手に持たれている写真の主は、千晶のダーリンこと稲葉夕士であった。
椅子に座ったまま、振り向く格好で写っていた。伏せ目がちで、まるで流し眼でも送っているかのように見えている。
ちょうど少し逆光になっていて、なんとも淫靡な雰囲気を漂わせている写真であった。
「んふふ〜、いいでしょ、この稲葉」
むふふと笑いながら、田代は千晶の手に収まっている写真をさっと取り返す。
「あっ」
残念そうな声を上げる千晶に、田代はニヤリと笑いかける。
「で・も。これは別よ。千晶ちゃん」
約束でしょ、と言いながらピラピラと写真を弄ぶ田代に、千晶はむっとした顔になる。
「分かってるさ」
不満そうに唇を尖らせながら、胸ポケットに手をやる。
「ほら」
そう言って取り出した写真を、田代は風のように奪い去って行った。
「これよ〜〜!!」
飛びあがって喜ぶ田代をよそに、千晶は先ほどの稲葉の写真を田代から奪い取り、じっくりと見つめる。
数分後、お互い十分に写真を堪能すると、ガシッと男らしく堅い握手を交わした。
「それじゃあ、今度も宜しくね」
ウインクをして田代が部屋から出ていった。
田代が出て行くと、千晶がドアの方へと移動して、ドアの前についている札を取り外す。
『進路の相談中につき、立ち入り禁止』の札は、千晶の机の奥に仕舞われ、また次の出番を待っている。
くしゅん!
その頃、アパートにいる稲葉は小さくくしゃみをしていた。
「風邪?」
鼻をこすりながら、今日は早めに寝ようと思う稲葉であった。
知らないということは平和である。
END
あとがき
こんかいは稲葉君出てきません
千晶先生と田代ちゃんの取引です
田代ちゃんがもらった稲葉の写真は、千晶先生の家でエプロンつけて料理してる姿です
プライベートは田代も珍しいのです
ということにしてやってください