- 触れる指先
-
隣にある温もり。
緩やかに呼吸する音がするから、まだ深く眠っているのだろう。
起こさぬよう振り向こうとすると急にするりと腹に腕が回ってきた。
そのままぐいと引っ張られ、背中から抱えこまれるように抱きしめられた。
布越しに重なりあう肌が暖かい。
トクントクンと心音が伝わってくる。
「千晶?」
起きていたのか?と囁けばう〜んと眠そうな声が返ってきた。
寝ている?
では、この腕は無意識なのか?
しっかと回された腕は簡単には脱け出せそうもない。
本当に、これで寝ているのだろうか......
しかし起きているまるで気配はない。
まぁ、考えても仕方がない。早々に見極めることを諦め、狭い腕の中で方向転換する。
千晶の顔が間近に迫り、やはりこの男は美しいのだなと改めて納得した。
すっと通った鼻梁に薄い唇。今は閉じられている切長の瞳の輝きは目が離せなくなるほどの光を放っている。
今まで経験した分だけの深みのある光に男も女も関係なく引き寄せられる。
そっと唇に指を走らせる。滑らかな肌触りだ。
そのまま頬に指を滑らせてアゴのラインを通って首筋から鎖骨へと下ろしていく。
そして下りてきた手を胸元に当てる。
掌から伝わる確かな鼓動。トクントクンと少し遅い一定のリズムを刻むこの音は、酷く安心する。
手と一緒に頭も千晶の胸元に近づける。
ゆっくりと瞼が重くなり、そして自分でも気がつかないうちに深い眠りへと誘われていった。
稲葉が眠るとぱちりと千晶の瞳が開いた。
なんて可愛い仕草をしてくれるのだ、この子は。
無駄に理性を試されながら千晶は眠れぬ夜を過ごした。
疲れを癒すはずが、さらに疲れたのは言うまでもないだろう。
ならば一緒に寝なければ済む話なのだが、それは出来ないのであった。
END
あとがき
甘めです
自分では妖アパ=我慢だと思っています(え
可愛い子が相手だと忍耐が試されます←